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どれだけ山々を超えただろう。はるか遠い、北の台地にやってきた。
火成岩の荒々しい岩に囲まれ、薄く雪をかぶった極限の地だが、
雪解けでできた小さな池には、高い空が美しく映っていた。
空気はとても冷たく、呼吸をするたび肺が冷えるのを感じる。
それでも太陽は強く照りつけており、身体が凍えきることはない。
氷で縁どられた池には生物の気配はなく、
長い間積もったままの固い雪には、足跡ひとつついていない。
聞こえるのは、時折吹く風が、耳をかすめゆく音だけ。
俺は自らの意思で、ここに繋いでくれと言った。
決して断ち切ることのできない強い力で。
二度とこの翼に、風をつかませてはいけない。
刺さるように冷たい風が吹きぬけた。
これから長い時を過ごすことになる。
その時が少しでもはやく訪れることを、待ち続ける。
そして次に涙を流すのは、その時だろう。
渦巻く空気が、頬に涙の痕を残した。
君を守るために強さを求め続けた。
しかし本当の強さは、力だけではなかった。
確かに俺に必要だったのは、心の強さ。
心の弱さに気づかぬよう、真っ直ぐに突き進んでいた。
もし心が強ければ、心を鍛えることができていたら、
あの頃のように、また一緒に笑って過ごせたのかもしれない。
それでもこうするしかなかった。大切なものを守り続けるために。
これ以上何かを傷つけて生きることはできなかったんだ。
結局、最後は人間らしい言い訳で逃げたんだろう。
俺はただ、君のために生きていたかった。
その竜の眼から、ひと筋の涙が流れた。
それはあの日と同じ、青く高い空の下だった。