Project Eagle 属するryuruの日々を書きつづった日記。
思ったこと、感じたことを記しておきたい。
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いつでも彼は、風と共に生きていた。
潮の匂いがする港町には、一年を通じてさまざまな風が吹きつける。
その街の塔の上から、風の吹くほうを見つめ、この先の天候をじっと見定める。
どんな嵐が来ようと、どんな吹雪が襲おうと、彼がその役目を離れることはなかった。
その優しい眼は、いつも遠い地平や水平線を見つめていた。
幼いころから、ずっと彼の居場所に憧れていた。
街を見下ろし、空を眺め続けられる場所がうらやましかった。
手の届かないあの場所へは、どうやって行くんだろうと、いつも疑問に思っていた。
天気が悪くなる時は、彼はまっさきに僕に伝えてくれた。
そのとき港から吹いた風は生暖かくて、水平線の暗雲がこちらに来るだろうことがわかった。
南南西から吹く強い風は、これから大雨が降る兆候だと教えてくれた。
北から冷たい風が吹きはじめたら、雪が降る季節になったことを、いち早く知らせてくれる。
何年も、この街を守るためにそうしてきたんだそうだ。
そしてこれからも、僕らの街のために。
僕が十六になったいまでも、彼はあの場所で空を見守り続けている。
昔に比べて表情も穏やかになり、だいぶ年をとったことが見てわかるのに、
その錆びた身体を磨いてやることもできず、ただ遠くから彼を見守ることしかできなかった。
その風見鶏があることすら、みんなは忘れてしまったのだろうか。
いまでは誰ひとり、空を見上げるものもいない。
それは僕に翼があればいいのにと、はじめて思った時だった。
潮の匂いがする港町には、一年を通じてさまざまな風が吹きつける。
その街の塔の上から、風の吹くほうを見つめ、この先の天候をじっと見定める。
どんな嵐が来ようと、どんな吹雪が襲おうと、彼がその役目を離れることはなかった。
その優しい眼は、いつも遠い地平や水平線を見つめていた。
幼いころから、ずっと彼の居場所に憧れていた。
街を見下ろし、空を眺め続けられる場所がうらやましかった。
手の届かないあの場所へは、どうやって行くんだろうと、いつも疑問に思っていた。
天気が悪くなる時は、彼はまっさきに僕に伝えてくれた。
そのとき港から吹いた風は生暖かくて、水平線の暗雲がこちらに来るだろうことがわかった。
南南西から吹く強い風は、これから大雨が降る兆候だと教えてくれた。
北から冷たい風が吹きはじめたら、雪が降る季節になったことを、いち早く知らせてくれる。
何年も、この街を守るためにそうしてきたんだそうだ。
そしてこれからも、僕らの街のために。
僕が十六になったいまでも、彼はあの場所で空を見守り続けている。
昔に比べて表情も穏やかになり、だいぶ年をとったことが見てわかるのに、
その錆びた身体を磨いてやることもできず、ただ遠くから彼を見守ることしかできなかった。
その風見鶏があることすら、みんなは忘れてしまったのだろうか。
いまでは誰ひとり、空を見上げるものもいない。
それは僕に翼があればいいのにと、はじめて思った時だった。
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